今回のテーマは、オール電化車中泊に「あると便利」なグッズやアイテムです。
前回の記事で、車内オール電化についてご紹介しましたが、今回は具体的な用品やアイテムをご紹介しつつ、オール電化車中泊のイメージを膨らませて頂こうと思います。
この記事は以下のような想定で書かれています。
(1)車内には、居住スペース用のエアコンやFFヒーターを装備していない
(2)車内での「調理」「煖房」「照明」等に、炎を燃やすアイテムを使用しない
(3)車内には、100Aバッテリーに1500W程度のインバーターを備えたサブバッテリーを搭載している
なお、車中泊を行う時期は晩秋~初冬をイメージしています。
それでは、オール電化車中泊に「あると便利な用品・アイテム」をご紹介してゆきましょう。
サブバッテリーの容量や電力消費の仕組みなど
まずは、用品・アイテムをご紹介する前に、サブバッテリーが蓄電できる電力量や、その電力を消費する仕組みなどを理解しておく必要があります。
サブバッテリーはどの程度の電力を貯めておくことができ、その電力を消費して使用する電気機器は、どの程度の電力を消費するのかがわからないと、車内で使用する電気機器を選ぶことができないためです。
100Ahのサブバッテリーに貯めて置ける電力量
一般的に、サブバッテリーには、100Ah(アンペアアワー)のバッテリーが使われています。
バッテリー内の電気は直流12V(ボルト)で貯められているため、AC100Vで使用するためには、インバーターで変換する必要があります。
直流12Vで蓄電された100Ahを交流100Vに変換すると100Ah×12V=1200Whとなります。
1200Whとは、100Wの電球を12時間点灯、600Wのセラミックヒーターなら2時間運転できる電力量です。
ただし、直流→交流に変換する際に全てを変換することはできず約2割程度が失われます。これを「変換ロス」といいますが、直流100Aを交流に変換した場合には、「100Ah×12V×0.8」で960Whしか利用できないことになります。
つまり、サブバッテリーで使用する電気機器を選ぶ際には、使いたい機器の「消費電力×使用時間」ぶんの消費電力量がサブバッテリーの容量以内であることが必要になります。
車内調理にあると便利な用品・アイテム
ガスバーナーやアルコールバーナー、固形燃料など屋外でのキャンプでよく使われる人気の熱源ですが、車内での使用は酸欠や一酸化炭素中毒の危険性、火災の危険性などを勘案するとお勧めできません。
せっかくサブバッテリーを搭載しているのであれば、蓄電されている電力を利用しない手はありません。
ただし、家電製品の消費電力は大きいため、サブバッテリーの電力を見境なく使ってしまうと、あっという間に使い切ってしまうため、必要な製品を絞り込む必要があります。
車内調理は電子レンジをメインで
車内調理には電子レンジがおすすめです。
「電子レンジなんて電気食うから使えないでしょ?」
皆さんからよくそういう質問を受けるのですが、実は電子レンジはオール電化車中泊向きの電気機器の1つです。
確かに、動作中の消費電力は大きいですが動作時間は短いので、バッテリーの充電容量の消費はあまり大きくありません。
例えば、消費電力800Wの電子レンジでも、3分間の加熱では【800W÷60分×3分】で「40W」しか消費しません。
パックご飯を温め、惣菜やレトルト品を温め、お茶用のお湯をカップに温める…といったシチュエーションで、3分加熱を5回繰り返すとすれば、1食当たりの消費電力は合計200Wということになります。
おすすめ電子レンジの特徴
筆者が車内に常備している電子レンジは以下のポイントで選んでいます。
- 消費電力ができるだけ小さいこと
消費電力が大きな機種ほど早く温められますが、サブバッテリーの電力量には限りがあるため、消費電力ができるだけ小さい電子レンジがおすすめです。
- 極端に小さすぎないこと
車載機器はできるだけコンパクトな方がスペース効率が高いですが、電子レンジの場合には、あまりに小さすぎると庫内も小さくなり大判のお弁当などが入らない場合があります。
- フラットテーブル式であること
電子レンジというとターンテーブル式が多いですが、大判お弁当などの対角線の大きさが庫内で回らない場合があるため、コンパクトさを求める車載電子レンジはフラットテーブル式がおすすめです。
- ヘルツフリーであること
電気機器は使用する地域によって、50Hz/60Hzを切り替えますが、ヘルツフリーであれば、切換え操作が不要で使用できます。
50Hz/60Hzを切換え可能なインバーターでは、50Hzで使用した方が消費電力は少なくなります。
- 単機能電子レンジであること
車載サブバッテリーやポータブル電源での使用が前提であれば、大きな電力を長時間必要とするオーブンやグリル機能はあっても使用できません。
以上のような観点から、筆者が実際に購入して使用しているのはこちらです。
![]() 画像出典:Amazon【山善 電子レンジ YRL-F180】リーズナブルな家電を数多く発売している「山善」の単機能電子レンジ「YRL-F18」は筆者も実際にキャンピングカーに常時設置して車中泊などで利用しています。庫内容量18L、フラットテーブル式でテーブルが回転しないため大判のお弁当も温められますし、ヘルツフリーなので50Hz/60Hzいずれでも動作可能です。定格消費電力が、800W(50Hz)/1050W(60Hz)と小さめなので一般的なサブバッテリーや定格出力1000Wクラスのポータブル電源(50Hz指定)でも利用可能です。 |
レンジクック~電子レンジで「焼く」調理が可能に
前項で「車内調理には電子レンジがおすすめ」と書きましたが、電子レンジでは温めるしかできないのが難点ですが、そんな電子レンジの弱点を補ってくれるのが、電子レンジ調理器「レンジクック」です。
レンジクックは、蓋つきのレンジパンのような形状で、アルミ製の本体外側底部に、セラミックの発熱体が貼り付けられており、これが電子レンジのマイクローウエーブで発熱し、電子レンジの本来の機能では不可能な「焼く」調理が可能です。
これにより、魚や肉、野菜などを「焼く」ことが可能で、ステンレス制の蓋をすることで、マイクロウエーブを遮断し、食品をレンジ加熱ではなく底面の熱で焼く調理が可能です。
画像は、筆者が実際に車中泊の際に「レンジクック」を使って焼いたステーキです。レンジ加熱ではないので、肉の中心部分には「レア」な部分が残っています。通常の電子レンジ調理器にはできない芸当です。
![]() 画像出典:Amazon【オリエント 電子レンジ用調理器具 レンジクック】レンジクックは、単に温める事しかできない電子レンジの弱点である「焼く」ことができる電子レンジ調理器です。肉や魚、野菜はもちろん、お好み焼きからホットサンドまで、レンジクックの使い方を工夫することで車内調理の幅をひろげることができます。 |
電気ケトル~車中泊では「お湯」の利用シーンが多い
お茶やコーヒーを淹れる、カップ味噌汁を作る、車内の加湿など、車中泊では「お湯」の利用シーンは少なくないため、電気ケトルがあれば非常に便利です。
多くの家庭用電気ケトルは消費電力が1200~1300Wと大きいですが、車内での使用には消費電力の小さな製品の使用がおすすめです。
ただし、使用する機器の消費電力にもよりますが、インバーターの最大出力を超えるため、電子レンジと電気ケトルを一度に動作させることはできません。
![]() 画像出典:Amazon【HAGOOGI(ハゴオギ) 電気ケトル ガラス二重構造 1.0L】HAGOOGIは中国深圳の電機メーカーですが、こちらのケトルは消費電力が車内で使いやすい900Wと小さく、ガラス製なのでお湯が沸くところを見ることができます。容量は1リットルと1.2リットルがあります。 |
IHヒーターがおすすめできない理由
「IHヒーターじゃダメなの?」と思われる方もいると思います。
IHヒーターを使用する目的は何でしょう。
もし、鍋ものや煮込みなどを想定しているならおすすめできません。
電子レンジの出力が大きい割に車内で使えるのと逆の理由で、鍋ものも煮込みも、加熱時間が長いためバッテリーの電力を使い果たしてしまう可能性が高いこと。
さらに電子レンジは庫内で調理を行うのと逆に、炒めたり焼いたりする調理の場合、油や湯気や煙が車内の汚れにもつながるためです。
車内煖房にあると便利な用品・アイテム
酸欠や一酸化炭素中毒、火災の防止するために、煖房においても炎を使うことは避けたいと思っています。
そうなると、車内で暖かく過ごすためのアイテムを用意しなければなりませんが、限りあるバッテリーの蓄電量をできるだけセーブすることも勘案したいところです。
電気ブランケットをコタツ代わりに~就寝時にも
電気で温めない通常のブランケットでも暖かくはなりますが、やはり電気の力で暖まる方が煖房効果を期待できます。
ブランケットを腰から足にかけて巻いておけばコタツのように下半身から温めてくれます。身体の下にもブランケットを敷いて、下半身全体を包み込むようにすると効率よく暖まることができます。
なお、電気ブランケットは、就寝向けの項で紹介している電気毛布と兼用でもよいかもしれません。
![]() 画像出典:Amazon【ROCKFIT フランネル素材 電気掛け敷き毛布 電気ブランケット】こちらの電気ブランケットは厚手で掛け敷き毛布としても使用可能で、肌触りのよいフランネル生地を採用し、抗菌防臭防虫処理が施され洗濯可能です。25~70℃の幅で1度ごとに温度調節が可能、1~12時間のタイマー付で高機能なAC100V向け電気ブランケットです。サイズは140×80cm、カラーは2色から選択可。消費電力は90Whと電気毛布としては少し大きめです。筆者もフランネル生地の電気毛布を使用していますが、肌触りが良いことがお気に入りです。就寝時に寝袋の上からかけておけば「弱」でもぬくぬくで眠ることができます。 |
上半身も温めたいなら電熱ベストがおすすめ
コタツのようにブランケットや電気毛布で下半身だけを温めるのでは足りないという場合には、電熱ベストがおすすめです。
電熱ベストとは、ベスト(チョッキ)の背中や腰、首元、お腹などに電熱線が仕込まれており、モバイルバッテリーなどを電源に発熱します。
電熱ベストは車内のみならず、車外での活動でも非常に暖かく過ごすことが可能です。
ただ、電熱ベストは一般に良く知られたメーカーの製品はなく、いわゆるノーブランド品ばかりなので品質については多少不安があります。
![]() 画像出典:Amazon【LABEWVI 電熱ベスト 3段階温度調節 モバイルバッテリー付き】この電熱ベストは、背面に腰から背中にかけて左右3枚ずつ6枚、首筋に1枚、前面は腹部分に左右2枚ずつ4枚で全部で11カ所の発熱部分があり、強・中・弱の三段階で上半身を全体的に温めてくれます。また、10,000mAhのモバイルバッテリーが付属しており、最大7時間の連続使用が可能です。付属品以外のモバイルバッテリーも使用可能なので、予備を持っておけば、キャンプや車中泊の間ずっと温め続けることが可能です。 |
車内での就寝時にあると便利な用品・アイテム
筆者は、「暖かく眠れたらそのキャンプ(車中泊)は概ね成功」と考えていて、就寝時の防寒には力を入れています。
就寝時にサブバッテリーの電気を使わずに暖かく眠れることは、オール電化車中泊においてかなり重要な条件ですが、暖かさが足りない場合には、前述の電気ブランケットや電気毛布は就寝時の防寒においても強い味方となります。
車中泊マット~下からの冷気を遮断する
「暖かく眠れたら概ね成功」という観点で見れば、スリープマットは非常に重要なアイテムです。
FFヒーターやエアコンを備えていないキャンピングカー車内は、エンジンが冷え切る頃になると、車内は外気温と大差ない寒さになるだけでなく、車体の鉄板を通して冷気がしんしんと伝わってきます。
特に下からの冷気はかなり強烈ですが、そんな中で暖かく就寝するには、冷気を遮断ひ寝心地を確保する車中泊マットは欠かせません。
![]() 画像出典:Amazon【QUICKCAMP 車中泊インフレーターマット 8cm厚 シングル】冬の車中泊の寒さは厳しいものがあるのでしっかりしたマットが必要です。このマットはウレタンに空気を含ませるタイプのインフレーターマットです。8cmの厚みがあるとありますが実際にはもう少し薄めです。車中泊での使用であれば充分暖かさと寝心地を提供してくれます。 |
冬用寝袋~冬は3シーズン用では乗り切れない
冬は、例え車中泊であっても3シーズン要の寝袋では完全に役不足です。必ずある程度の耐寒性能を持った冬用寝袋を用意する必要があります。
平地での車中泊であれば、最低使用温度-5~-10℃程度のものでも充分使用可能ですし、寒い場合には毛布を併用することで対処できますが、山間部のキャンプ場等の場合には最低使用温度-25℃程度の製品を用意したいところです。
また、電気毛布を用意していれば安心ですが、サブバッテリーの蓄電量が底をついた場合を想定すれば、マットと寝袋だけで十分な暖かさを確保しておかなければなりません。
また形状は、使いやすいのは封筒型ですが、体感性能的にはマミー型が優れています。
![]() 画像出典:Amazon【Coleman 寝袋 マルチレイヤースリーピングバッグ】このスリーピングバッグは、封筒型ですがアウトレイヤー・ミッドレイヤー・フリースの3層構造を組み替えることで4シーズンに対応、最低使用温度は-11℃となっており、冬季の使用でも高い防寒効果を発揮します。サイズは90cm×200cmで、大人の男性でも充分に余裕があります。洗濯機での丸洗いが可能です。 |
サブバッテリー以外の電源を用意する
サブバッテリーを搭載していない、あるいは、サブバッテリーは搭載しているが、インバーターを備えておらず、AC100Vでの出力ができない場合については、ポータブル電源の購入での代替電源とすることができます。
ポータブル電源は、充電容量だけではなく「定格出力」や「瞬間最大出力」などにも考慮が必要ですので、オール電化車中泊のためのポータブル電源の選び方やおすすめ機種などについては、過去記事をご参考ください。
さらに、スマートフォンやガジェットの充電・給電向けのポータブル電源についても過去記事にてご紹介済みですので、こちらも併せてご覧ください。
オール電化車中泊にあると便利な用品・アイテムまとめ
ここまででご紹介した電気機器を1泊車中泊で使用した場合、
- 電子レンジ 800W×3/60分×10回=400W
- 電気毛布 50W×6時間=300W
- モバイルバッテリー 10000mAh×5個充電=180W
とすると、トータルで880Wの容量が必要となり、100Aのサブバッテリーの実効容量960Whでぎりぎり使用可能ということになります。
できれば、モバイルバッテリーは自宅や、キャンプに向かう途中で走行充電などで充電を済ませておくことで、180Wぶんの容量の余裕が生まれ、容量をある程度残すことで、サブバッテリーへの負担(劣化原因)も少なくすることが可能になります。
車内で暖かく過ごせて、食事を作ることができて、暖かく眠ることができれば車中泊は基本的に成功だと思います。
欲を言えばキリがありませんが、最低限の電気容量をサブバッテリーで確保してあれば、オール電化車中泊は可能です。
もし、可能であれば、小~中容量のポータブル電源で電力を補助できれば、それだけ余裕のあるオール電化車中泊が可能となります。
ギリギリだと電気残量が気になりますが、酸欠や一酸化炭素中毒、火災の心配よりはずっと気が楽ですし、メインバッテリーが温存されていれば、いざとなればエンジンをかけて離脱することも可能ですので、気楽にオール電化車中泊にチャレンジしてもよいのではないかと思います。
さっそく、使用する電気量を計算して、オール電化車中泊にでかけてみませんか?